2016年5月26日木曜日

『大放言』(百田 尚樹 著)

 サミットの開催、オバマ大統領の広島訪問、沖縄の暴行事件と国際的に落ち着かないニュースを断続的に聞く今日この頃です。

 で、そういった問題にもスパッと切り込んであるのが、この著書です。別に今を狙ったわけではないのでしょうが・・・(発行は昨年です)

以下、気になったフレーズを引用します。

戦争のない世界は理想である。私たちはそれを目指していかなければならない。しかし、残念なことに、口で「平和」を唱えるだけでは戦争は止められない。世界と日本に必要なのは、戦争を起こさせない「力」である。力のない正義は無能である。

極東軍事裁判で・・・被告全員に無罪を主張したインドの・・・パル判事はアメリカを批判して厳しい口調で言った。「これを投下したところの国から、、真実味のある心からの懺悔の言葉をいまだに聞いたことがない。(中略)罪のない老人やこどもや婦人を幾万人、幾十万人、殺してもいいというのだろうか。われわれはこうした手合いで、ふたたび人道や平和について語り合いたくはない」この言葉には綺麗事ではない真実がある。これこそ、私たち日本人が忘れてはいけない気持ちではないだろうか。

事の是非はともかくとして、物事の見方の一つとして、高校生にもぜひ読んでほしい本である。もちろん本屋でお金を出して・・・

ついでに勉強に関しても「大放言」

要するに、自己啓発コレクターは、毛生え薬をはしごするハゲと同じなのだ。「今度こそ効くに違いない!」「この本こそ、自分を成功に導いてくれるはずだ!」と期待を込めて買うのだが、期待したほどの効果は現れず、「もっと効く本があるはずだ」と、新しい本を探すというわけだ。

「やればできる」という言葉は、「やればできた」者が言う言葉だと思う。過去に頑張った結果、あることを達成した経験のある者がだけが口にできる言葉なのだ。・・・世の親や教師に言いたい。何もやったことのない子に「やればできる」というのはやめようではないか。彼らに言うべきことは「やらないのは、できないのと同じだ」という言葉だと思う。もうこれ以上、日本にバカを増やしてほしくない。

2016年5月23日月曜日

『太陽の塔』(森見登美彦 著)

表題の「太陽の塔」は言うまでもなく、大阪にある「太陽の塔」である。しかし、物語の舞台はその近くにある大学ではなく、京都大学である。

その京大生の主人公が失恋して、立ち直る(あるいは開き直る?)までの話を、「街を怪物が闊歩している…クリスマスという怪物が…。」など、大げさな、けど知的な、時として笑えるような比喩で綴った小説である。

「京都の女子大生は京大生が奪って行く」という都市伝説に真剣に(?)取り組んだ作品とも言える。

読みやすさ(読みやすい。一気に読める)


感情移入度(多数の男子は感情移入ができる)

2016年5月18日水曜日

『山月記』より

印象に残った一節を
「己は詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交わって切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。かといって、又、己は俗物の間に伍することも潔しとしなかった。共に、我が臆病な自尊心と、尊大な羞恥心との所為である。己の珠に非ざることことを惧れるが故に、敢て刻苦して磨こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、碌々として瓦に伍することも出来なかった。」

勉強にも通ずる話で、大して学力もないのに、それを人から指摘される、あるいはそれを自ら認めるのが怖く、人から教えを請わず、ただ、自己満足のみに浸っている高校生がいかに多いことか。

そんなことだから、人を介さない、さして効果のないような映像授業に走ってしまうのだろう。

この国はどこへ向かっていくのだろうか・・・

未来からきた本

なんと平成44年発行!それまで生きているだろうか?
天下の新潮文庫でもこんなことがあるんだ・・・

それはともかく、本の紹介。
『山月記・李陵』(中島敦 著)

中国の古典から題材をとった、4作品。有名な「山月記」や漢文で登場する司馬遷や孔子、子路などの人物像が浮かび上がるような作品もある。ただ、注釈が多く、漢文もたびたび出てきて、少々読みづらいかもしれない。けれど、退屈なわけでなく、深みのある作品ばかりである。

読みやすさ(読みにくい、なかなか進まない)
感情移入度(漢文でなじみのある人物の描写は多少興味深いかもしれない)




2016年5月10日火曜日

石川県立歴史博物館

石川県立歴史博物館に行ってきました。実は昨年リニューアルしたらしく、リニューアル後に初めて行きました。以前から映像で見せるものはあったのですが、今回デジタル化されて、より鮮明にな
り、かつ体感できる工夫がされています。ついつい、見入ってしまいました。

石川県の歴史を原始古代から現代まっで、2フロアで一気に見せてくれる常設展示は、日本史を習っている高校生には興味をもって見れるのではないでしょうか。

ちなみに下の左の写真はおしゃれなガラス張りの休憩所で、ここでまったりするのもおすすめ。そして、何よりここばかりは、新幹線効果とは無縁の静けさ。

地元民には半日ゆったりできる、おすすめスポットです。

そして、調子にのって、写真のブックカバーまで買っちゃいました。(これも結構安くておすすめ)

2016年5月2日月曜日

『博士の愛した数式』(小川洋子 著)

交通事故により記憶障害となった元数学研究家の「博士」と、家政婦とその息子の「ルート」との温かい交流を描いた作品。

会話の端々にでてくる数字にまつわる話は数学嫌いな高校生でもきっと興味深いと思われるが、もう一つ出てくるプロ野球(阪神)の話は今一つピンと来ない高校生も多いかもしれない。

第1回本屋大賞を受賞した作品で映画化もされている。

以下、いずれも「博士」の会話の中から、気になったフレーズを抜粋。(カッコ内は私の感想)

「問題を作った人には、答えが分かっている。必ず答えがあると保証された問題を解くのは、そこに見えている頂上へ向かって、ガイド付きの登山道をハイキングするようなものだよ。数学の真理は、道なき道の果てに、誰にも知られずそっと潜んでいる。しかもその場所は頂上とは限らない。切り立った崖の岩間かもしれないし、谷底かもしれない」

(この通りなら、高校や大学受験の数学など、まさしく、この会話の前者の通りで、こんなもので苦しんだり、ましてや人生が左右されるなんで、バカらしくなる。)

「数学のひらめきも、最初から頭に数式が浮かぶ訳ではない。まず飛び込んでくるのは、数学的なイメージだ。輪郭は抽象的でも、手触りは明確に感じ取れるイメージなんだ。それと似ているかもしれないね」
(こうなると、高校や大学受験の数学で「ひらめき」などと言っていることが、ちゃんちゃらおかしい)

「物質にも自然現象にも左右されない、永遠の真実は、目には見えないのだ。数学はその姿を解明し、表現することができる。なにものもそれを邪魔できない」

読みやすさ(読みやすい、一気に読める)
感情移入度(数学と野球に関しては人によるが、結構感動できる話ではある)

『キッチン』(吉本ばなな 著)

言わずと知れたロングべストセラーの作品

3編の短編小説からなり、いずれも、愛する人をなくし、孤独感、喪失感を感じながらも、次のステップに踏み出す主人公を描く。

美しい情景描写、心象描写があり、何度でも読み返してほしい作品。

実は、私自身、当時はベストセラーを積極的に読むという習慣はなく(ていうか今でもないが…)、今ごろになって読んでみました。今更ながら、ベストセラーになるのもうなづける作品でした。

読みやすさ(読みやすい)

感情移入度(主人公がいずれも年齢的に近いこともあり、はまれるかも)